行ってきました。
やなぎみわ「無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語」展
http://www.haramuseum.or.jp/
やなぎみわさんについては、最初のデパガ連作の時は面白いとは思ったものの、「男性の視線」を裏返しにしたアイロニカルなフェミニズム・アートという構図がややわかりやすくもあり、正直「一発ネタ」ぽいかなぁとも思ったりもしました。それが巨大な連作写真"My Grandmothers"シリーズになると、写真の美しさもさることながら、その内包しているテーマが一気に重層的になって、失礼ながら「これがあのやなぎみわか・・?」と、観ていて圧倒されました。
そして今回の寓話シリーズ。
やっぱりすごい。
なんか、こんな勢いで作品に凄みが増してきて、大丈夫なのか?と思うほど。
今回の展覧会は昨年丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開かれた「少女地獄極楽老女」展の発展形と聞いていたのですが、新作の映像作品を加えて「寓話」に焦点を絞った展示になっています。
テントで頭をすっぽり覆った女(→参照)を中心に据え、寓話をモチーフに(多くの寓話がそうであるように)美と醜、可愛らしさとおぞましさ、夢と悪夢・・・が境目がわからないほどに入り乱れた世界を、正方形の白黒写真で切り取っていく。
そしてまた、寓話がウソだとわかっていても人の心の奥に食い込んでいるように、正方形に切り取られた世界は明らかに虚構だとわかっていても、その虚構を演じている少女の肉体のリアリティによって虚構の境目を越えて心の中にじわじわと入り込んでくる。
その中にはさらに"My Grandmothers"から追求し続けている「女性の若さ・老い」というテーマも包含していて、何重にも読み解くことができる。
ほとんど「アート」というよりは「映画的文法」で撮影された新作の映像「砂女」では、やはり寓話をモチーフにしながら少女→老女→少女と受け継がれる「女性性の連環」というテーマにまで広がっていっている。
相変わらず言葉足らずで上手く伝えられないのが悔しいですが、すごいです。ほんとに。個人的には日本の現代アートのなかでも重要な展覧会になるんじゃないかと思ってます。
観に来ていたのは9割女の子。女性にとってはかなり重く残酷な部分を含んだ主題でもあったわけで、これを観てどんな感想を持ったのか聞いてみたい気がちょっとしました。
ショップで今回の展覧会のパンフレット(赤いビロード風の表紙でとても美しい!)を購入してから、併設のカフェでお茶。
名物の「イメージケーキ」(展覧会の内容にちなんだ特製ケーキ)のセットを注文。
「テントの女(砂女)」をモチーフにした、マンゴームースのクレープ包み。味もとっても美味しかったです。