もうこのまま永遠に出ないんではないかと思われるほど発売延期が続いたEW&Fの新作"Illumintaion"がついに店頭に並びました。
- アーティスト: EARTH WIND & FIRE
- 出版社/メーカー: Sanctuary Records
- 発売日: 2005/09/20
- メディア: CD
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1stシングルカットの"Show Me The Way"の時点で購入決定だったのですが、アルバムも予想にたがわぬ大傑作です。
'70年代に活躍した多くのファンク・バンドがディスコ→エレポップの流れに追従しようとして低迷期に入ってしまったのはご存知の通り。偉大なEW&Fですら'80年代前半以降は傑作と呼べる作品をほとんど残すことができず、その代わりにおびただしいベスト盤ばかりが店頭に並び、「懐メロバンド」になってしまったのか・・・という状況でした。*1
その一方で'90年代中盤、NJSの終焉以降のR&Bは明らかにかつてのソウル・ファンクバンドの持っていたメロウネスを踏まえた音作りに大きく傾いてきていて、Raphael Saadiqや蟹江さん家のJohn Legendなんかの作品はモロだったんですが、"Instant Vintage"の内ジャケに"Gospelderic"と大書きしてあるように、彼らは彼らなりに過去の偉大なソウル・ミュージックへの憧憬、それを今の時代に受け継いでいる自負とともに一種のもどかしさも感じていたのではないか・・という気もするのです。オリジネーターではなくアダプターであることを超えられないという。
今作"Illumination"では、Raphael Saadiqを筆頭にJam & Lewis、BEPのwill i. amといった現在のR&Bシーンを引っ張る面々がプロデュースにあたり、いわば「師匠と弟子」の共同作品的なアルバムになっています。
こうしたコラボレーションでは得てして時代におもねったものや不必要に神格化されたものになったりする場合があるのですが、このアルバムが素晴らしいのは、弟子たちは偉大なアーティストに最大限のリスペクトを捧げながらも十全の力で自分の作品世界はきっちりと作り上げ、師匠たちも弟子の素晴らしさを理解したうえで熟練の技でそれに応えている点です。
"Show Me The Way"、アルバムバージョンはRadio Editにとてもとても美しいコーダがついて7分47秒の大作になってますが、ここでのラファエル・サディークとモーリス・ホワイトの歌声が重なるところでは、思わずグッときます。
だいたいラファエル・サディークの切ない歌声はそれだけでも反則なのに。こんなに美しいコーラスを聴かされたら泣きそうになるに決まってるじゃないですか。
他にも、同じくラファエルのプロデュースによるミディアム"Pass You By"や、アースの数々のバラード名曲のマナーを現在によみがえらせたBrian Mcnightの"To You"など、名曲揃い。
とりあえずアメリカのitmsで全曲の試聴ができるので、itms-jの「国を選ぶ」を日本→USAに切り替えてから→こちらをクリックして聴いてみて下さい。
*1:それでもやはりEW&Fはさすがで、P-Funk軍団以外でコンスタントに新作を出すことが出来ていた数少ないファンク・バンドではあったのですが、正直前作も前々作も・・自分にとってはイマイチでした