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我一塊の肉塊なり〜フランシス・ベーコン展@東京近美

大規模なフランシス・ベーコン展が開かれるということで、楽しみではあったのですが、一方でベーコン展、どうなのよ?という思いも。
だってベーコンこそ現代アートを「いびつなもの」として決定的に位置づけしてしまった人。
会田誠だってベーコンなかりせば、アートとして認知されていたかどうか。
いわば、巨大な暗黒なわけですよ。ベーコンの作品は。
美術を単に「美しいもの」として捉えている人、常識と良識を持った人に対する挑戦なわけで。
だから、今回のベーコン展のサイトで著名人の賛辞を見て、ちょっと違うんじゃないか?と。
ツイッターで「相田みつをと間違えて会田誠展を観に来ちゃったカップル」のほんとかジョークかわからないツイートがあったけど、このページだけ見て興味を持った人がのこのこと観に行ったら、悲惨なことになるんじゃ。
少なくともデートには絶対使っちゃダメ。


で、ベーコン展いつ行こうか?とプランしてたのですが、どうも初日である8日しか空きがない。8日はずすと次が29日になってしまう。
初日かぁ・・・・どうなんだろ。
日経の前宣伝がどこまで浸透してるのかちょっと予想がつかない。
でも、おそらく美術展におしよせるアート大好きおばさんやリタイア団塊世代は来ないんじゃないかと。
初日の午前中から観に来るような酔狂な人は自分のようなサブカル崩れの落伍者か暇な美大生ぐらいじゃないかと。
ということで、イチかバチか、初日のオープン直後を狙って行くことにしました。


竹橋に着いたのは午前10時10分ぐらい。

いい天気!あったかい!
はてさて、美術館のチケット売り場はというと・・・

全然人いない!
ホッとしたのが半分、ちょっと肩透かしが半分。
自分は既にチケットショップでチケット入手してたので、そのまま会場へ。
会場内、ちょうどいい混み具合!
スカスカすぎず、混んでて見えないこともなく。
やっぱり身分不詳のおっさんが多い。ほぼ予想通り。


まず最初に「人物像習作 II」がお出迎え。
いいねいいね!
ベーコンの絵画は大作が多い。
それに対して近美はご存知の通り天井が低い。
この圧迫感たるや。
こうした個展にありがちな、周辺の画家の作品で水増しすることなく、ベーコンの作品が続々と。
正直、クオリティ的には最高傑作ばかり!とはいかないものの、
これだけ集めるのは大変だったと思う。
スフィンクスが4点ずらっと並んでいたのは壮観。
ゴッホモチーフのはちょっとイマイチかなああ・・
教皇モチーフのもちょっと少ない。
会場の後半、三幅対が一気に展示されているスペースも素晴らしかったなあ。
ホモセクシュアリティについては、一部ほのめかす程度であまり正面からは捉えられていなかった。それはちょっと残念ポイント。


全体としては、ベーコン、マイルドベーコン。
足がすくむような、ビリビリくるような、刺激の強い作品はそんなになくて、ピカソやフォービズムとの類似性を感じさせるような身体の変容を描いた作品が多い。
でも、キュビズムやフォービズムの作品と比べて、ベーコンの歪みは突出して気持ち悪い。
マイルドベーコンだけど、やっぱりベーコンはベーコン。観ていて生理的にぞわぞわくる。
この不気味さはどこからくるのだろう・・・
それを考えながら作品を観ていたのですが、思ったのは、ベーコン、人間の肉体の不完全な部分、気持ち悪い部分、それをリアルに描いてるんですよね。
脊柱とか歯とか臀部とかくるぶしとか。
自分自身も含め、人間が肉の塊であることを、強烈につきつけられる。
特徴的なピンクと青、白の色使いは皮膚と動脈・静脈をイメージさせる。
ベーコンの代表作の一つに解体した牛を背景にした人物像、というものがあるけど、ベーコンの歪んだ作品群は、人間を腑分けした様を描いているような気持ちにさせられる。
我一塊の肉塊なり。
人間って、なんでこんなに気持ち悪い形をしてるんだろう。
改めてそう思ってしまう。


でも、展覧会ではそんな事は言えない。言えないから、なんとか状況を糊塗しようと、饒舌になる。
今回の展覧会、ちょっと言葉が多すぎる気がしました。
作品の毒を薄めようと一生懸命になっているような。


土方巽とペーター・ヴェルツの舞踏は、観る前は必要なのか?とも思ったけど、悪くなかったです。
「生きている肉体の限界」が逆にベーコンの歪みを照射していて。



・・・というわけで、フランシス・ベーコン展、彼の作品世界の真髄を知る・・とまでは行かないけれど、なかなかに刺激的な展覧会です。
「なかなかに」・・・うん、良くも悪くも。
まあデートには向かないけどな!