昨日自分の書いた記事に対する反応や他の人の文章を読んで思ったのですが、
もしかして、みんな、村上隆うんぬん以前に、現代アート自体嫌いなんじゃ・・・・?
なんかそんな気がしましたがどうでしょう?
だとしたらそれはとっても悲しいです。もったいないです。
みんなもっと現代アートを好きになってよぉぉぉ〜〜・・。
見るだけならそんなお金かからないし、こんなにスリリングな脳内冒険って、そうそうないと思うんだけど・・。
というわけで、もしかして前回の記事から現代美術に興味を持ってくれたかもしれない人向けに、日本の現代美術について超かいつまんでご紹介。
パート1は村上隆(1962年生)以前の日本現代美術の巨匠たちを10人、パート2では村上以降に生まれた村上同世代〜ポスト村上のアーティスト10人を列挙してみます。
まずはプレ村上の10人を。
1.古賀春江 1895生
古賀春江 - Wikipedia
生まれは19世紀。第二次大戦前の美術界でシュールレアリズムを追及した人(男性です)。
代表作は「海」や「窓外の化粧」など。
「窓外の化粧」1930年の作品ですよ。ポップでモダンで軽やかで、でも白昼夢みたいで。佐々木マキさんなんかを経由して、今でもカッコよい。「アフタヌーン」の中綴じポスターになっててもおかしくないぐらい。
2.吉原治良 1905生
吉原治良 - Wikipedia
戦後日本の現代美術における大きなムーヴメントであった「具体派」。その具体美術協会をまとめていたのが吉原さんです。
吉原さんの作品は、とにかく「○」。中期以降は○ばっかりです。
白い円 1970年
確かに、たかが丸なんですが、これが美術館で巨大な実物を見ると、そこだけ空気がちょっと変わってることに気付きます。なんというか、凛としてるんですよね。
3.草間弥生 1929生
草間彌生 - Wikipedia
http://www.yayoi-kusama.jp/
草間さんは現役でバリバリ活躍しているので有名だと思います。吉原さんが○の人なら草間さんはドットの人。
2005年の「スヌーピー:ライフデザイン展」でもスヌーピーを水玉に塗りこめてました。
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4.篠原有司男 1932生
篠原有司男 - Wikipedia
http://www.new-york-art.com/shinohara/
篠原さんも現役バリバリ。歳取ると共にどんどんアナーキーになっていくすごい老人。
極彩色のオブジェと「ボクシングペインティング」のパフォーマンスがよく知られています。そのエネルギッシュな活躍は公式ブログhttp://gyuchang.jugem.jp/で。
篠原有司男対談集 早く、美しく、そしてリズミカルであれ (GYUCHANG EXPLOSION!PROJECT)
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5.河原温 1933生
河原温 - Wikipedia
現在も活躍中らしいのですが、ほとんど隠遁生活を送っているようで、あまり動向が外に出てきません。
渡米後は、キャンバスに日付を書いただけの作品がほとんどなのですが、初期には漫画の影響を大きく受けたドローイングを残してます。
6.赤瀬川原平 1937生
赤瀬川原平 - Wikipedia
現在も多方面で活躍中なので、もしかしたら現代美術アーティストとしての活躍を知らない人もいるかも。
彼こそが日本における「現代アートは何でもやっちゃった者勝ち」の最初の実践者といえるのでは。
個人として、また「ハイ・レッド・センター」としての無茶なパフォーマンスは本になってます。
東京ミキサー計画:ハイレッド・センター直接行動の記録 (ちくま文庫)
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写真は1969年、銀座の路上でのパフォーマンス「清掃/BE CLEAN!」の風景。
赤瀬川さんの活動で最も有名なのは、「模型千円札事件」。千円札の精巧な贋作を「これはアートです!」と言ってたら逮捕されてしまった・・・という。
結局裁判では有罪確定。「現代アートといえども限界があるのね」ということを知らしめた事件でした。
7.宮島達男 1957生
宮島達男 - Wikipedia
http://www.tatsuomiyajima.com/jp/
赤瀬川さんから宮島さんまで、生年が20年空いてますね。1940年代生まれで誰かいたかな?
宮島さんはLEDカウンターを使った作品で知られています。なので、印刷物や画像では彼の作品の素晴らしさは伝わらない。
暗闇にかすかに光るいくつもの数字・・それぞれが1づつカウントアップされていきます。あるものは早く、あるものはゆっくりと・・。そして、数字が9になったあと、「0」の時にはなにも表示されません。そしてまた1からカウントアップ。それの繰り返し。なのに、見ていると無機的な光の動きが、まるで生きているように感じられてくる。静謐で美しい世界が広がります。
画像は1999年の代表作「Megadeath」。青色LEDのカウンターを無数に使って、数字の遷移だけで「生と死」を表現している。これを見たときはほんとに戦慄・感動したですよ。
8.千住博 1958生
千住博 - Wikipedia
http://www.hiroshisenju.com/
もしかしたら村上作品より高額かも。日本以上に海外で知名度が高い画家です。
代表的なモチーフは滝。「ウォーターフォール」シリーズです。
この画像は、1995年、ベネチア・ビエンナーレで優秀賞を取った時のものだと思います。
見ていて分かるとおり、シンプルなのですが非常に日本の心を感じさせる精神性の高い抽象画です。
ちなみに千住さんは村上さんのことが大っ嫌いらしいですが本当か知りません。
9.奈良美智 1959生
奈良美智 - Wikipedia
http://harappa-h.org/AtoZ/
村上隆と並列に語られることが多いにもかかわらず、なぜか嫌われてないのはやっぱり人徳の違いなのでしょうか?
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漫画の影響を強く受けた作風ではあるのですが、小さな子供や子犬のような、小さくて弱い者に向けた暖かな視線が心に沁みます。
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10.中原浩大 1961生
中原浩大 - Wikipedia
村上隆が嫌いな人がよく口にするのは、「本来あそこの席には中原浩大が座るはずだった/べきだった」というもの。まあ・・たしかに村上作品に中原エピゴーネン的な要素がないといえば嘘になる。ただ、ちょっとだけ、中原浩大さんはタイミングが早すぎたように思います。ほんとにちょっとだけ。
フィギュアを作品にしたのは村上君が最初ではないんです。中原浩大という関西の作家が最初で、村上君はそれを真似たんです。当時は美術の動向にシミュレーショニズムがあったりして、村上君は作品にそれを導入したわけです。今、中原浩大は、どう思っているのでしょうね? ただ、私たちの世代はフィギュアに限った話ではありませんが、僕らはものをつくるとき、どこかである種の趣味性を通って、アート、もしくは専門的なものへと繋げていきます。誰しもプラモデルを経験し、ウルトラマンや仮面ライダーなどを見ながら大きくなってきたわけです。ヤノベケンジは中原浩大がフィギュアをつくっているんだから、自分も趣味的な感覚を持って作品をつくってもいいんだという勇気をえたわけです。彼はオタクです。その意味では中原浩大の出方が、ヤノベケンジというオタクを美術界に送り出したと言えます。中原浩大はもっと評価を受けていいと思うし、今でもそういったことが囁かれてはいるので、長い目で見ると、追々そういった評価が出てくるんじゃないでしょうか。
画像はレゴを使った「彫刻」。タイトルは、そのまんまの「レゴ」。1991年。
プレ村上の10人は以上。
このあとは、ポスト村上の10人に続きます。