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【追悼】ピエール・エルメ完全終了のお知らせ

乳製品大手のオハヨー乳業がピエール・エルメ監修で「ヨーグルト・イスパハン」を発売されるというニュース、

とても悲しい気持ちになりました。
「ああ、エルメもここまで来てしまったか・・・」と。
そして、エルメ絡みの商品を買うことはないだろうと思っていましたが、これは買おうと思いました。
「パティシエ」ピエール・エルメの最期を看取る気持ちで。


このヨーグルト・イスパハン、発売は10/8とのことでしたが、今日近所のコンビニに行ったら1個残ってました。
値段は148円。


これがヨーグルト・イスパハンのパッケージ。

エルメの「H」のエンブレムはありませんね。
原材料表示。

添加物たんまり。
とはいえ、個人的には添加物については、別にいくらでも好きなだけ入れればいいと思っています。それで美味しくなるならば。
フタを開けてみます。

ほんのりピンク色。果肉らしきものも見えますが、これは原材料表示から見ると白桃なんでしょうね。
スプーンで掬ってみます。

ヨーグルトは固めなので、スプーンで掬った跡が残ります。
でもこれは乳脂肪分ではなくてゼラチンなのがわかってるからなあ。


食べてみました。
・・・とりあえず、マズくは、ない。
最悪の予想は回避されました。
ほんのりラズベリー、わずかにライチ、さらにひそかにローズ。
まあ148円のヨーグルトなりの味です。
148円の「イスパハン風味」のヨーグルト。
言い換えれば、安いイスパハンもどきのヨーグルト。
1度食べて、ふーん・・と思って、それでじゅうぶん。


エルメさんは、これを発売して、何がしたかったんだろう?
・・・ビジネスか。ビジネスだろうね。
今回のヨーグルト・イスパハン発売のニュースを聞いて、もしや彼がここでパティシエ魂を発揮して、最高のクオリティのヨーグルトを発売するかも・・・?という一縷の期待も、実はほんのちょっとだけあったのですが、その淡い期待は潰えました。
これで確定しました。ピエール・エルメ氏はパティシエとしては完全終了。彼はもはやただの恰幅のいいビジネスマンです。
残念です。とても残念です。
彼は良いパティシエになれる才能を持っていたかもしれないのに。


ああ、エルメさん、あなたのケーキを初めて食べた時のことはよく覚えています。
もう15年ほど前になるのかな、ホテルニューオータニのSATSUKIで発売されたばかりのイスパハンやモンブラン、ミルフィーユ・ショコラ・レなどを食べました。
イスパハンは確かにこれまで全く経験したことのない、独創的で高度なバランスの取れた美味しいケーキだと思いました。その他のケーキも、驚きはないものの、素晴らしいクオリティだと感じました。
そして、ケーキ数個とドリンクだけで5000円以上とられたのもよく覚えています。あの時は焦った。
その時が、自分にとってのエルメのピークでした。


それが反転したのも、よく覚えています。
「キャレ・ブラン」というケーキです。
この新作キャレ・ブラン、当時の宣伝文句で「全く新しい味!素材に何が使われているか分かりますか?」ということで、どんなケーキなのかが完全に伏せられていたのです。
その自信たっぷりの姿勢に、自分は第2のイスパハン誕生か!?と期待して食べてみたのです。
うん、確かに、複雑な味でした。何の味のケーキか表現が困難な味。
でも、・・・・まずい。
まずいよ!
こんなまずいケーキ、生まれて初めてだよ!


でも、その頃は、エルメを理解できない自分のほうが未熟なんだろう、と思っていました。
世の中では彼のことを「スイーツ界のピカソ」などと呼んでいましたし。
そして、それからしばらくして、自分の母親の誕生日に、舞浜のイクスピアリに当時あったピエール・エルメのカフェへ行ったのです。
そこでは、エルメのスイーツづくしのコースがあったので、それを食べてもらおうと思って。
ですが、その誕生日会は悲惨なものになりました。
出てくるスイーツ、どれもこれも、みんなまずい。
母親は招待された立場上怒ることはなかったですが、がっかりしているのは明らかでした。
本当に、あの時は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
そして、思ったのです。
いくら独創的な味のスイーツであろうとも、食べた人を悲しい気持ちにさせるスイーツは、果たして正しいのだろうか・・・?と。
その日以来、我が家ではエルメのケーキを食べることはありませんでした。


でも、その頃からエルメが混迷しているのは、ニュースからはっきり伝わってきました。
斬新なケーキを作ろうとしては失敗し、その後は和素材に手を出して、柚子だの抹茶だののケーキを乱発、最後にはわさびのケーキを作っていましたね。
わさび入りのケーキなんて、きょうびB級バラエティーの罰ゲームだってあまりやらないですよ。
でも、結局、彼はイスパハンを超えるケーキを作ることが出来なかった。
そこでエルメさんが何をしたか、と言えば、トレードマークのイスパハンを様々なスイーツに転用する、という、イスパハンの安売りです。
ケークのイスパハン、マカロンのイスパハン、グラノーラのイスパハン、などなど・・・
そして、どん詰まりに出てきたのが、今回のヨーグルト・イスパハン。
もう彼の手札は尽きたんでしょうね。


思うのですが、ピエール・エルメにとってイスパハンというケーキは、彼を成功に導いたと同時に呪縛となっていたのではないでしょうか。
イスパハンは確かに独創的で、奇跡的なバランスの上に成り立っているケーキです。
ですが、そこで周囲が彼を「スイーツ界のピカソ」などと持ち上げたために、彼はイスパハンのレベルの斬新なケーキを作ることを宿命づけてしまったのでは?
そのため、彼はひたすら斬新な素材の組み合わせのケーキを作り続けることを余儀なくされた。だけど、彼が作り出す斬新なケーキは、残念ながらイスパハンにあった奇跡のバランスを維持することができなかった。そうした大量の失敗作の屍を乗り越えて、彼は作り続けるしかなかった。イスパハンを超えるケーキを。


そう考えると、ちょっと可哀想にも思うし、残念でもありますね。
そんな独創的なケーキなどに血道を上げることなく、ただ「単に美味しいケーキ」を作り続けていれば、ピエール・エルメという店はとても良いパティスリーになっただろうに。その才能は持っていると思うのに。
その時は、今のような世界的な名声を得ることはできないでしょう。だけど、名声のために仕事をしているのですか?それならば、最初にも書いたように、やっぱりビジネスマンですよ。それは。


今回のヨーグルト・イスパハンをもって、パティシエとしてのピエール・エルメは終了した、と自分は思います。
彼がもし息を吹き返すことがあるならば、まずは東京だけでも何軒もあるデパ地下の店を青山店だけを残し全部閉店して、和素材もスパイスも使うのをやめて、イスパハンのバリエーションは封印して、ひたすら茶色いケーキを丹精込めて作る・・
その時は喜んでいくらでもケーキ買いたいと思います。
その時までは、さようなら。