http://www.asahi.com/obituaries/update/0130/004.html
73歳というのに驚きました。確かにフルクサスの時代から活躍してたんだからそのぐらいの歳でもおかしくはないんだけど。。。
パイクさんは、1980年代文化のリーダーだったし、ヒーローでした。
ブラウン管から映し出された、眼がくらむような強烈な光。めまぐるしく飛びまわる色の塊。なんだか分からないけど、とにかく全く新しいヴィジョン、アートの形が出現したんだ、というウズウズ、ワクワクするようなシーンを何度も見せてくれた。
彼がいなければテレビがオブジェとして成立する、という概念もなかったし、今やどんなショップでも当たり前になってるテレビをディスプレイとして使用することもなかったし、現代アートの形は現在とは全く異なるものになっていたのは間違いないです。
'80年代全体を覆っていた、躁的な高揚感と混乱したまま放置された空気。それを端的に体現したのが彼であり、彼の作品であり、そのピークが1984年のお正月に世界同時中継された番組「グッド・モーニング・ミスター・オーウェル」だったわけで。
この番組は日本では放送されなかったはずで、その後ダイジェストを教育テレビで観ましたが、見事にぐっちゃぐちゃ。世界中の最先端アーティストが各地でこぞってパフォーマンスを行い、その映像にエフェクターをかけながらザッピングのように繋いでいく、というものでした。彼にしか、そしてこの時代にしか出来なかった、延々と続くカオス。
今のアートシーンには良くも悪くも「邪気」が満ちていますが、この頃がアートが(あるいは社会も)「無邪気」でいられた最後の時代だったのかも、と思ってしまいます。
これは1986年10月の「11PM」でのナム・ジュン・パイク特集です。
番組が番組だけに分かりやすいというか、けっこう面白いです。
本人も登場して、中沢新一さんと対談したりしてます。
1時間番組なので、前後編にわけました。もしよければどうぞ。
→Nam Jun Paik on TV Show "11PM" (前編・後編)(YouTube)
彼がいなくなって、本当にさびしいです。
ご冥福を心からお祈り申し上げます。