「早坂未紀の世界」を運営されているAZICON1さんから、非常に貴重な雑誌を譲っていただきました。
「実戦シンセサイザー エレクトロ・マシン入門の決定版 これでキミもYMOサウンドにチャレンジ」
電波新聞社・"Audio"別冊
昭和55年(1980年)10月30日発行
時代的には「増殖∞」のころ。
あのフジカセットの「磁性紀」キャンペーン広告もちゃんと掲載されていました。
ただ、カラーグラビアページで紹介されているのはYMOではなく、「シンセ族最前線ルポ」。
このあたり、さすが電波新聞社。
「シンセ族」のトップを飾っているのが、ローランドSYSTEM100を傍らに従えた女子中学生。
和様建築の部屋にコードびこびこのシンセ、そしておめかしした'80年代風の髪型の女の子。
「私は翔んでるテクノ・ギャル」のあおり文・・・。
いろんなものが凝縮されています。
白黒グラビアの特集記事は「イエロー・マジック・オーケストラのすべて その軌跡と未来を探る」とようやくYMO絡みの記事になるのですが、記事スペースの半分以上がなせか当時のシンセ・レコードのセレクションコーナーになっていて、YMOの扱いがなんだか小さい。
ディスコグラフィーにしても、例えば「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」の紹介文が
デビュー作から数えてほぼ1年ぶりに発表されたセカンド・アルバム。目立った変化はみられないが、いくぶんオリエンタル・ムードが薄れて、ヨーロピアン・ムードが強められている。デビュー作を上回る新鮮味、あるいは斬新性は望めないとしても、ビートルズ・ナンバーを入れて親しみやすさが強められるなど、スケールという点で大きく飛躍した。
と、なんだか突き放したような物言い。
さすが電波新聞社。(こればっか)
ちなみに、YMO特集の半分以上を占める「特選シンセ・レコード」のリストは以下のとおり。
シンセ・レコード(海外盤)特別27選
- ヨーロッパ特急:クラフトワーク
- 人間解体:クラフトワーク
- 幻想アンドロイド:チューブウェイ・アーミー
- エレクトリック・ショック!:ゲイリー・ニューマン
- フェードラ:タンジェリン・ドリーム
- ルビコン:タンジェリン・ドリーム
- タングラム:タンジェリン・ドリーム
- エイジス:エドガー・フローゼ
- プラスティックの中の未来:ザ・バグルス
- メタル・ヒート:ジョン・フォックス
- 幻の果てに:ヒューマン・リーグ
- 螺旋:ヴァンゲリス
- チャイナ:ヴァンゲリス
- ミュージック・ファクトリー:フライング・リザーズ
- 幻想惑星:ジャン・ミッシェル・ジャール
- 軌跡:ジャン・ミッシェル・ジャール
- テイク・アウェイ:アンディ・パートリッジ
- 鏡面界:ブライアン・イーノ
- アナザー・グリーン・ワールド:ブライアン・イーノ
- エレクトリック・ファンタジー:オーケストラ・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク
- ファンキー・タウン:リップス asin:B0000071ML(画像なし)
- ニューヨーク・ロンドン・パリ・ミュンヘン:M
- コレクト・ユース・オブ・ソープ:マガジン
- スター・トレック〜ブラック・ホール:ミーコ *1
- ハッピー・エンディング:テリー・ライリー (未CD化?)
- サスペリア:ゴブリン
- テクノ革命:テレックス (CD=ALCA-557 廃盤)
シンセレコード(国内盤)特別10選
- 月の光:冨田勲
- 惑星:冨田勲
- バミューダ・トライアングル:冨田勲
- OASIS:喜多郎
- シルクロード:喜多郎
- デジタル・ミステリー・ツアー:茂木由多加
- フライト・インフォメーション:茂木由多加 (未CD化)
- 我が心はいまだ安らかならず:バッハ・リヴォリューション
- No Warning:バッハ・リヴォリューション
- エレクトロポップス・オブ・ビートルズ'80 asin:B00005F7X9(画像なし)
このリスト見て思い出したのですが、そういえば当時はYMOは所詮流行のディスコという認識があって、また、特に硬派な音楽雑誌ではシンセを使った音楽のヒエラルキーが厳然とあった気がする。
それは、
クラシックモチーフもの*2>>フュージョン系>>ニューウェーヴ>>>>>ディスコ(YMOはここ)
上のアルバムセレクションやYMOに対する冷たさはそうした思想背景がある気がします。
YMO特集のすぐ後ろからはいよいよ実戦編なのですが、
第1章の「よくわかるシンセサイザー講座」の講師がいきなり平沢進だったりして、またびっくり。
この先はどんどんマニアックな方向に進んでいって、ラジカセ2台でのピンポン録音の方法とか(やりましたよー自分も・・・)、
4trカセットレコーダーを使って「東風」の多重録音の方法とか、最後にはシンセサイザー自作講座まで・・・。
さすが電波新聞社。感服です。
*1:画像は"Star Wars and Other Galactic Funk"のもの
*2:"Switched-On Bach"を始祖とし、冨田勲を頂点とする