昨日買って来てから通しで3回聴きました。1回目はPCのスピーカーで、
2回目はヘッドフォンで、3回目はステレオコンポで。
なんでわざわざ再生環境をいちいち変えたかというと、これはとても重要な
情報だと思うのでこれから聴く人や、買ったけどあまりピンと来なかった人は
是非気をつけていただきたいのですが、このCDは
絶対にPCのスピーカーで聞かないでください!
iTunesなどもってのほか!
自分も最初iTunesで取り込んで聴いたときは「???」だったのですが、
ヘッドフォンで聴きなおして愕然。音量うんぬんでなく、PCのスピーカーでは
このCDが伝えたい重要な情報がほとんど欠落してしまいます。さらにiTunesは
曲間に無音ができるので全体の緻密な構成がぶちこわし。
最低限CDラジカセで聴いてほしいです。そうやって対峙するに値するCDです。
ポピュラー・ミュージック史上*1最大の欠落「スマイル」はその後も亡霊のように
音楽界に君臨していたわけで、どんなに優れたレコードが発表されても
「スマイル」に勝つことはできなかった・・・。そりゃそうですよ。
「不在のチャンピオン」は倒しようがないもの。
自分のようなヘタレ音楽好きですら、その伝説(神話、ですね)は常に頭に
ありました。
その伝説のチャンピオンがついに姿をあらわす。最初ライブで全曲演奏する、と
聞いたときには「まさか!」と思いました。そしてスタジオ録音盤正式リリース・・・。
昨日CDを手に取った瞬間は思いがけず夢が叶ってしまったときに感じる、びっくりと
嬉しさと、少しの寂しさがよぎりました。
あのちょっと寂しい感じってなんなんでしょうね。
それで昨日から今日まで聴いたのですが。
自分の現時点の結論はこうです。
- 「もしこのアルバムが1966年に出ていたら・・」という想いを止めるのは不可能だけれど、それはあまり意味がない。この作品は「2004年に発売された、時代など関係ないマスターピース」、それでいいじゃない。
- それではこの作品が仮に1966年に発売されていたとしたら(もちろん構成・音像等かなり違ったものだろうけれど)。自分はそれでもその「存在しなかった1966年のスマイル」は"Pet Sounds"を凌駕することはなかっただろう、と思います。どちらもまごうかたなき傑作(になった)でしょうが、2つの作品は向いているベクトルがあまりにも違いすぎる。
「スマイル」の亡霊はその後のビーチ・ボーイズの作品だけでなく、前作
「ペット・サウンズ」にも及んでいて、あれだけの名盤が常に「(暫定)最高傑作」の
立場を余儀なくされていたわけですが、これでようやく「ペット・サウンズ」を
正しい場所に位置づけることができましたね。
「ペット・サウンズ」はポピュラー・ミュージックとしてのビーチ・ボーイズの最高傑作。
「スマイル」はポピュラー・ミュージックの要素は濃厚なものの、もっと広い意味での「音楽」としての名作。
発売元が元々クラシックの現代音楽を得意としていた「ノンサッチ」レーベルなのも*2、
なにかの符合のように思います。
ともあれ、37年間音楽界に居座った亡霊を追い払ったブライアン・ウィルソンの
勇気には感動、というかびっくりしました。普通あそこまで歳をとって
キャリアも重ねてたらなかなか出来ないですよ。