日本屈指のコメディ映画おたくのケラが、自分自身一時代を築いたた’80年代をテーマに映画を撮るということで、かなりの期待度で映画館に向かいました。
初日の3回目の上映だったのですが、入りは6〜7割程度で、ちょっと意外な感じ。しかも2回目の上映中に映写機トラブルがあったらしく場内かなりドタバタしていてました。
1980年12月の1ヶ月間を異母三姉妹を中心に描いたストーリーで
それぞれのエピソードは微妙に交錯しながらも、基本的には
別々のストーリーとして描かれています。
’70年代フォーク文化を色濃く背負った長女を犬山犬子、
過剰な恋愛体質の元アイドル、現教育実習生の次女をともさかりえ
聖子ちゃんカットの女子高生の三女を蒼井優
がそれぞれ演じています。
中では蒼井優のパートがダントツに良いです。
「ぴあフィルムフェスティバルに出品する作品を制作する高校映画研究会」
という設定も、全体のトーンも、ラストの完成した作品の試写会のシーンも、
「’80年代ATG系青春映画」の空気感がばっちり。
パンフレットによると、当初はこのパートだけで作品を作るつもりだったらしい。
一方で、ともさかりえのパートは、面白いんだけど、’80年代の空気がどうも
におってこない。
確かに小道具や衣装や劇中流れる「テクノ歌謡」は正しく’80年代なんだけど、
どうもしっくりこない。
???と思っていたら、彼女が一言、
「女の子の眉毛が細いのは違ったよね。」
・・・なるほど。
当時のアイドルは、良くも悪くもナチュラルだったのですね。
あと、細かい点でいくつか?と思った点。これは自分自身の
思い込みもあるかもしれませんが。
- 「・・・これはヤバイですよ。」というせりふは当時まだ一般的ではなかった気がする。
- 同じく「むかつくよね。」も’80年代中盤以降の言葉遣いではなかったか?
- 初代ウォークマンのヘッドホンの色はオレンジではなく黒だったはず。オレンジは「ウォークマンII」だったように覚えてるが。
- YMOに対して、犬山犬子が「テクノォ・テクノォ」とロボットダンスをするが、ロボットダンス自体はテクノポップではなくヒップホップ文化の絡みであり、一般化するのは1983年以降だったはず。
このあたり詳しい方がいたら、いろいろ教えてください。
全体の構成はウッディ・アレンを意識したとのことで、過去のコメディー作品や
’80年代カルチャーへのオマージュも満載でしたが、ウッディ・アレンの作風は
簡単に見えて意外と難しいのですね。今回の作品もとても面白かったのですが、
ケラの実力・経歴を考えると、もっといけたはず・・・と思ってしまうのもまた事実。
次回は純粋なナンセンスコメディーを撮ってもらいたい!