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京都アニメーションについて、二言三言。

すみません、今回はケーキの話ではないのですが、これを書かないとどうしても前に進めないので、主に自分のためにエントリ書きます。

先日、7月18日、京都にあるアニメーション制作会社、京都アニメーション(通称京アニ)が放火され、多くの犠牲者が出ました。

この事件は、アニメにさほど興味のない人にとっても平成以降最悪の放火事件として衝撃を与えましたが、アニメを愛する人達にとっては、言葉にならないほどの辛い事件でした。
涼宮ハルヒの憂鬱やけいおん!、らき☆すたのファンだった人にとっては自分の青春の一ページが失われたように感じて辛く悲しい思いをされたと思います。ですが、さらに言えば、京アニの最近作、Free!や響け!ユーフォニアム、ヴァイオレット・エヴァーガーデン、ツルネなどの作品を愛していた人にとっては、最愛の友人と、その人を産み育ててくれたご両親を一度に亡くしたような、痛切な思いをされたと思います。
かくいう自分も、そこまで熱狂的なファンではないけれど、それでも響け!ユーフォニアムという作品を心から愛していた身として、既に制作が発表されていた新作を心待ちにしていた身として、愛すべき登場人物たちが不条理にも焼き殺されたような、身を切られるような痛みを感じていました。
多分、自分以上にショックを受けた人もたくさんいると思います。
それだけ、今回の事件は、アニメ好き、京アニ好きの心に突き刺さる、大きな悲劇だったのです。

京アニのすごさを語る言葉は、どれだけあっても語りたりませんが、一言で言えば、3Dアニメ全盛の世界にあって、2Dアニメの美しさを極限まで突き詰めた、世界のポップカルチャーの至宝、とも言える存在なのです。
確かに、日本の2Dアニメでは、最も知名度の高いスタジオジブリや、エヴァシリーズを制作するスタジオカラー、独力でほとんどの作業をこなす新海誠監督など、多くの優秀なアニメスタジオがあります。だけど、そのほとんどが、数年に一本の劇場映画をメインとしているのに対して、京アニは劇場版の制作もありますが、基本は30分のTVアニメがメイン。
劇映画のアニメとTVアニメの違いは、やはり劇映画の方は多くの予算と時間をかけて、大画面での鑑賞に堪えるクオリティを持っているということ。一方で、上映時間についてはどんなに長くても120分、2時間程度が限界ですよね。
それに対して、TVアニメは、予算も少ないのでなかなか画面のクオリティはあげられない、そのかわり、1クール12話×25分、合計300分=5時間をストーリーに費やせるので、劇映画がどうしても割愛しなければならない細かな描写や枝葉のストーリーを盛り込むことができる。
そうした違いがあります。
例えば、響け!ユーフォニアムは、主人公たちの高校1年生の話を、2クール、26話かけて描きました。トータルの上演時間は10時間以上。それだけかけるから、キャラクターにも、ストーリーにも、繊細で厚みのある表現が可能なのです。
そして、京アニのすごいところは、TVアニメ版であっても、劇映画と同等、いやそれ以上のクオリティーを保ったまま作品を制作する、というところです。

例えば、響け!ユーフォニアムは高校吹奏楽のお話ですが、これまでの多くのアニメでは、楽器を演奏するシーンというのはとても難易度が高いので、色々と演出でごまかして、演奏する手指などの表現は、極力省略する、というのが普通でした。
トランペットを吹くシーンなんかでも、トランペットを演奏する指の動きが正確だったためしはないのがこれまででした。
ですが、ユーフォにおいては、複雑な管楽器の構造から、演奏する際の運指まで、一部の隙もごまかしもなく、徹底的にリアルに描かれています。
例として、動画をあげておきます。
これは、ユーフォ2の5話、吹奏楽コンクール関西大会の演奏シーンです。
ここでは、自由曲が1曲まるまる、ノーカットで放送され、「奇跡」とまで呼ばれたシーンです。

響け!ユーフォニアム 2 Ep.05 三日月の舞 〜 全国大会出場校発表
曲の始まる前、みんなが楽器を構えた瞬間から、演奏が終わって指揮の滝先生が腕を振り下ろすまで、コンクールの緊張感と高揚感が余すところなく描かれています。
これが普通にテレビで放送されたということが、今もって驚異としか言いようがありません。

このように、響け!ユーフォニアムという作品は、TVアニメならではの、時間をじっくりかけた丁寧な心理描写と、キャラクターの魅力の掘り下げ、そして驚異的な作画、さらに言えば黒沢ともよさんを始めとした芸達者な声優さんの魅力もあって、「全力で青春を賭ける苦しさと美しさ」を描いて、見る人の心を捉えてなりません。
キャラクターの魅力としては、主人公の黄前久美子をはじめとして、部員全員が、高校生らしい、未成熟で凸凹のある、欠点だらけのキャラクターで、だけど、欠点だらけだけど必死に頑張る、その姿が、たまらなく愛おしいのです。
特に、黄前久美子は、主人公のくせに性格はあんまり良くないし、失言王と言われるほど失言を繰り返すし、いいとこあんまりない。のですが、ユーフォニアムという楽器、吹奏楽に燃やす気持ちは誰にも負けない。
黒沢ともよさんの演技の上手さもあって、屈指の名シーン。

響け!ユーフォニアム - 12話 - 中.

このようにして、響け!ユーフォニアムという作品では、とりたてて優秀でもない、性格も普通の高校生たちが、反目しあい、和解しながら、少しずつ目標に向かって進んでいく様が丁寧に丁寧に描かれ、見る人の感情移入を誘うのです。
そして、コンクールのシーンで圧倒する。
自分はもう、打ちのめされましたし、この作品に恋をしたといってもいいでしょう。
実際、この作品を見てから、サントラはもちろん、友人に頼んで有名な吹奏楽のCDを選んでもらって聞いてたりしましたから。


そんな響け!ユーフォニアム。1年生編が2クール26話、そして先日公開された劇場版が2年生編、さらに3年生編の制作も決定していました。
多分、3年生編・新作の公開は来年、あるいは再来年あたり?いずれにせよ、久美子たちの3年生がどのようなものか、すごく楽しみにしていました。していましたが・・・


このように、ユーフォは音楽ものとしても、青春ものとしても優れて魅力的なアニメだったのですが、一方で自分の愛するもう一つの京アニ作品、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、ストーリーも暗く、メッセージも、生きるとは?死とは?愛とは?という非常にシリアスなもので、アニメに癒やしや娯楽を求める人にとっては、重すぎると感じられるかもしれません。とっつきにくさはかなりあります。
ですが、この作品が京アニの、のみならず、アニメ表現におけるひとつの到達点と思っているのは、その画面の美しさ。
全てのシーンが美しい。例えばジブリの魔女の宅急便の架空のヨーロッパ世界、実際には存在しないけれどリアリティと美しさを持って立ち上がっているけれど、エヴァガでは、それ以上に美しく緻密な世界が描かれています。これがTVアニメとして放送されていたとはとても思えない。
中でも、主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンの、青い瞳の美しさは、本当にどんな宝石にも負けないぐらいの輝きを持っています。
この作品は、目の演技でストーリーを紡ぐシーンが多く、少佐のエメラルドグリーンの瞳や、ヴァイオレットの青い瞳、その美しさ、それが作品のキーとなっています。それだけに、瞳の描き方、美しさは筆舌に尽くしがたい。
しかも、その瞳の美しさは、1話の、人間の心をまだ持っていないヴァイオレットと、最終話の、人間の悲しみや愛を知ることが出来たヴァイオレット、1話と最終話の違いが繊細に描き分けられています。
こちらが、1話のヴァイオレット。
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こちらが最終話のヴァイオレット。
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この繊細な描き分けによって、彼女の心の成長が如実にわかる、それを描き出せるのが京アニというアニメ制作会社なのです。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンでは、戦争ものということで、ハードなアクションシーンもあります。
アクションシーンも、残酷ではあるけれど、ひたすら美しい。
アクションシーンの一部が動画にありました。

Violet Evergarden fight compilation

また、ヴァイオレット・エヴァーガーデンでは、どの回も、お涙頂戴ではない、心から感動できるストーリーが展開されるのですが、そのストーリーをよりエモーショナルにしているのが、美しい作画であり、圧倒的なクオリティがあるからこそ、重くシリアスなストーリーも心に容易に染み渡るのです。
例えば、娘を亡くした父親のために、娘の形見の傘を持って池を「歩く」シーン。

Violet Evergarden - Parasol Scene HD
この水の表現、アニメとは思えない美しさ、でも実写でも作り出せない美しさ。
これがヴァイオレット・エヴァーガーデンという作品なのです。

こんな、TVアニメでこのクオリティの作品、2020年1月公開予定の劇場版では、どんなものすごい作品になるか、楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。仕方なかったのですが・・・


・・・とまあ、自分としてはユーフォとエヴァガの新作を心待ちにしていたのですが、今回の悲劇を受けて、すぐには見られそうもない、というのは本当に残念です。
こんな理不尽が許されていいのか!という気持ちもあります。
ですが、まずは、亡くなった方、負傷された方に対して、これまでの功績に深く感謝して、これからの未来に向けて、明るい希望を持っていきたいと思います。自分のできることは精一杯したいです。
そして、ユーフォ3期、エヴァガ劇場版、どちらも、何年、何十年かかってもいい、いつか見ることが出来たら、とても素晴らしいことだな、と思います。


今回の悲劇で、多くのものが失われました。それは取り返しの付かないものですが、失われた痛みは永久に残りますが、前を向いていきたい。どんな形であれ、京アニさんの新作にまたいつか出会いたい。そして新しい感動をもらいたい。そのためには、まずは自分が恩返ししなきゃですね。
どうすれば恩返しできるのか、これから真剣に考えますが、その第一歩として、まずは、こうして自分自身に区切りをつけるために、そして、京アニのすごさを知らない人のために、このエントリを書きました。
これで少しは前を向いて歩いていけそうです。