友人からのメールに応えて:
あなたはよく知ってることだけど、「Papa told me」好きなのです。
これもよくご存知の通り、体調が最悪のときに、この本にはずいぶんお世話になった。
この作品が例のスイーツ脳と違うのは、「自分にとって大切な時間や空間を作り出すのは一種の戦いである」という力強くてシビアなテーマが全体を貫いているからだと思う。どっちかというと、自分を持たずにオシャレな流行に流されている人を嫌悪している。それこそ会社の同僚さんたちのようにH&Mで何時間も並んだ話を武勇伝として語る人たちとは正反対。
ひとりでいるのは確かに時々しんどいけど、それを安易な消費や安易なつながりで埋めようとしない。そういう楽な方向に惑わされずに、自分にとって本当に大切なものを探し続けて、少しづつ積み上げていく。ひとりでいることのしんどさ、それ自体を自分にとって大切なものだと受け止めて生きていく。
自分が「Papa told me」の中でもいちばん好きなエピソードが「マイ・ソリティア」という話。
Papa told me (11) (ヤングユーコミックス (138))
- 作者: 榛野なな恵
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1993/08
- メディア: コミック
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知世ちゃんパパの担当編集者北原さんが、勝手にお見合いをセッティングされちゃって・・というストーリー。
北原さんは、編集者としての激務をこなしながら、自分のお給料で可愛いリングを買っちゃうような人。それで別に躊躇なく左手の薬指にはめるような人。
でも、友人には「早くもっと高い指輪買ってくれるよう男みつけなさいよ 女のコが一人で指輪売場うろつくなんてみじめなもんなんだからさー」と言われてしまう。それで「なんで?なんで?」となる。
あなたも可愛い指輪とか買っちゃう人だからねー。でも、あなたの場合は友人にそんなこと言われたら殴りかかりそう・・。
作中での北原さんのモノローグにこんなのがあります。
一人でジャムを煮ること
一人で指輪を買うこと
一人で生きてること
でも、一人の人をずっと好きでいること
幸せな夢は見るけど幸せへの野心は持たないこと
どうしていけないのかしら
誰にも悪いことしてないのに
ううん
やっぱり悪いことなのかもしれない
誰かにとって
何かにとって
うん。確かにジャムを作るのは楽しい。買ったほうが安いんだけどね。
そのモノローグの後に、北原さんは偶然知世ちゃんと出会います。
そこで知世ちゃんのセリフがこれ。
そう、一人でいることは時々さみしい。
だけど、そのさみしさだって素敵なことなのさっ
お昼に外でカレー食べながらピープルウォッチングもそう。
同僚とつるんで社食・・では絶対に見られない景色が見えるし、秋の少し空気が乾いてきた昼下がりにもひたれるし。
だから、あなたの
>ゆっくりそういうのを感じてると、「淋しい」っていうのを噛みしめるのも、
>まあそんなに悪いことではないのかな?と思ったりして。
>秋はさ。そういう気持ちを味わうのにいい季節だと思うんだよね。
というのは、自分の心情であり、信条でもあり。
だから、一人でいるときはそのさみしさを存分に味わうとよろし。
秋のさみしい空気を存分に吸い込むとよろし。
そんで、今度会ったときには、また美味しいケーキ食べましょ!