Nyao's Funtime!!

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obさんキュレーション展「neo wassyoi」が切り開く地平線!

kaikai kiki所属の人気画家さん、obさん。
活動歴・実績もかなりある人気作家さんなのですが、自分不勉強で知ったのは数年前。
今年の冬、もうマスクをしながらでしたが、広尾のギャラリーで開催された個展を拝見して、すごくよくて。
訪問した時は、obさんはインスタライブをしながら作品制作中でしたので、会釈だけさせていただいて。
obさんの作品、ちょっとイラストっぽさ、キャラクター絵画っぽさもありつつ、絵としての強度がすごくて、大作も構成力がすごい。さすが世界的に人気の作家さんだけあるわーという。

そんなobさんが、今度キュレーション展をやります!でもこのご時世で開催がいつになるのかわかりません!ついては開催まで毎日動画配信やります!というのを知ったのは4月ですね。
そして、そのキュレーション展の出品メンバー見て、うわ、これは大変なことですよー・・となり。
そのメンバーとは・・

あきつかおる/冨岡想/庄司理子/さめほし/ミヤタナナ/齊藤拓未/てつ/光/安藤万実/きゃらあい(敬称略)という10名の作家さんで。
正直存じ上げない作家さんもいましたが、半分以上の作家さんは個展やライブペインティング、卒展などで作品を拝見していて、いくつか作品も購入させていただいたりしている、大好きな作家さんばかり。
そんな魅力的な作家さんが一同に会するなんてもう、すっごく楽しみで。
展示の開催も楽しみですが、開催まで作家さんを招いてのYoutubeの毎日配信も楽しみで。
配信が開始されてからは、毎日夜に配信を見てから寝る、というのが日課になってました。
こちらでアーカイブ見られます。
www.youtube.com
このライブ配信を毎日していた4月5月は、日本全体が自粛の体制。
アートのギャラリーもほとんどが実際の展示はできなくて、オンライン展示という形をとって開催されるのがいくつか。という状況。
展示状況はVR的に動画配信、作家さんはオンライン在廊、そして販売はネット上で・・というのは、まあ形としては苦肉の策でやむを得ない、でもやっぱりちょっと色々、なー、という部分もあり。でも仕方ないよね、という諦めでしたね。
そんな中、オンライン展示ではなくギャラリーの展示にこだわり、開催されるまでは作家さんとのトークでつなぐ、というのは、自分的には、むしろ作家さんの理解が深まってよかったのではないかと。
実際、毎日の配信では作家さんの作品に対する姿勢もわかりましたし、お絵かきチャットの緩い雰囲気の中で思いがけずキラリと光る発言があったり、とてもおもしろかったです。そして、より展示に対する期待が増していました。

そして、6月下旬に、ついに開催概要が発表。
zingarokk.com
展覧会タイトルは「neo wassyoi」、会期は6月26日から、ということで。場所は中野ブロードウェイ内のHidari Zingaro。
これはもう、初日行くしかない!
・・・ということで。

いざ、当日。
自分、どのぐらいの人が来るのか、全く読めなかったので、とりあえず開場1時間前に来ました。
そしたら・・
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ぜんぜん早かったですね。
ちょっと気合が空回りしてしまった感。
その後、スタッフさんが来て、このあたり行列されるの困るので、散れ!と言われて、やむを得ず一旦解散。
まずは、2階の展示を見ることに。
こちらは、すでに見られる状態になってました。
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おー!
2階のギャラリーは大作のみが展示されていて、どの作品も大きくて迫力があって、すごくいい。
仔細に眺めつつ、あとは、余った時間はブロードウェイうろついてなんとか暇つぶしてました。

そして、開場!
意地で一番乗りしてやりましたよ。
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ギャラリー内、どんな作品が並ぶのかは事前のライブ配信などである程度把握していましたが、実物の良さは、やっぱり動画でも伝わらない。実物すっごくいい!
やっぱりアート作品はオンライン展示では十全には伝わらないなー、というのが如実に。

では、ここで各作家さんの作品をごく簡単に紹介したいと思います。
今回の展覧会は前述の通りobさんがキュレーターとして、作家さんの選定から展示のアウトラインを決めていらっしゃるのですが、作家さんの選定基準としては、イラスト的、キャラクター的な要素を多分に持ちつつ、そこに収まりきれない、絵画としての作品制作に意欲を持つ作家さん、をネットの中から選出した、とのこと。
そして、10人の作家さんについて、グラデーションをもたせた、ということをおっしゃっていました。
実際、ギャラリーの展示も、入り口に近いほどエモーショナルで淡い作風の作家さん、奥に行くほどビビッドでカラフルな作風の作家さんが配置されていました。
両側の壁を手前から見ていってもいいし、ぐるりと一周するとピアニッシモ→フォルテッシモ→再びピアニッシモという強弱を感じさせることもできる。
自分は、この弱→強→弱、という見方をしました。

ということで、まずは入口右手に展示されている庄司理子さんの作品から。
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庄司さんの作品は、風景と消え入りそうな淡い線で描かれた少女の組み合わせが、うつろいゆく儚さを表現している、すごくエモーショナルな作品が特徴的。
今回はドローイングも多く、ボリューム的には他の作家さんと比べてやや質素。
でも、実は2階にものすごい大作を展示していて、
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これはすごかったですねー。
ドローイングにはバレエを踊っている少女の線画もあり、これはライブ配信で庄司さんがバレエとの出会いの話を詳しくされていたので、より深く鑑賞することができました。
まずは入口として静謐な世界が展開されました。


次に、齊藤拓未さんの空間。
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作品の展示の仕方が、これだけで一つのインスタレーションになっていて、世界観の構築度合いが素晴らしい。
齊藤さんも、どちらかというと明度彩度の低い色合いを使った作品が多く、描かれている少女も茫漠とした表情をしていて、とてもエモーショナルな作品が多いです。
武蔵野美術大学の卒展でも見せていましたが、一つの画面の中にパッチワークのように区切られた空間を構成し、女の子の上半身や砂場の風景、キッチュなアクセサリーなどが描かれる、独特の構成をされている作品が魅力的で、今回の展示では脚だけを描いた作品や後ろ姿を描いた作品もあり、全体がパッチワーク状になっている、そんな全体で一つの絵画、ともいえる構成になってました。すごくよかった・・

その次が、てつさんの作品。
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てつさんの作品世界も淡いですね。作品の制作手法は多彩だけど、一貫した世界観があって、すごく引き込まれる。キャラクター的な要素、イラスト的な要素もあるんだけど、それを軽々と超えた淡くも強度のある作品群、すごく魅力的です。
てつさんについては、キュレーションをされていたfog展、齊藤さんやゆーきんさんも参加されていてすごく見たかったのですが残念ながら外出できず見送った経緯もあり、すごく実作品見たかったのです。ほんものすごく良かった・・

その次は安藤万実さんの作品。
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安藤さんになると、だいぶ色づき始めた感じですね。
そして、今回の作家さんの中で最もアブストラクトの要素が強い。
いちばんコンクリートな要素が強いのが庄司さんになるのかな?その反対の際、という感じがします。
一見すると抽象画に見える作品もあるのですが、よく見るとキャラクターが描かれていたり、作品から静かなエネルギーを感じる、そんな魅力があります。
2階の大作も素晴らしかった。
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以上の4名の作家さんが入口から向かって右側の壁に展示されていました。
いちばん奥の壁は、4人の作家さんが1枚ずつ作品を並べていて、この展示のエッセンスを凝縮したような空間になっていました。
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さめほしさん、きゃらあいさん、ミヤタナナさん、安藤万実さん。
どの作品もすっごくすっごくいい!
甲乙つけられない傑作揃い。イラスト・キャラクター絵画を超えたアートになってます。意欲的な作品群。

ここからは、左手側の壁になります。
いちばん奥がミヤタナナさんのスペース。
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ミヤタさんは2017年~2020年の作品を並べていて、古い作品は躁状態的、近作になるほど静かな中にもすごみを増した作品になっています。
ケオティックな古い作風もいいけど、やっぱり個人的には近作のほうがより洗練されていて、すごく良くなっているように感じます。
今回の参加作家さんの中ではもっともキャラクター的な要素の強い、でもその中から破壊される悲しみや苦しみ、その中からの再生を描いていて、キャラクターの持つ刹那的な要素を絵画に持ち込んでいる。すごく好きです。魅力的。
2階の大作もよかったです。
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その隣は、さめほしさんときゃらあいさんの作品が組み合わされて展示されていました。
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さめほしさんの絵はとても特徴的、きゃらあいさんの絵も特徴的なのですが、この組み合わせ、すごく相性が良くて、マリアージュっていう感じですね。
さめほしさんの作品は、女の子が壊れていく様子に可愛さを見出すという、すごく可愛くてすごく怖い絵、甘い毒薬が多くの人を魅了しているのだと思います。今回の作品はより女の子の壊れ方が激しくて、ほとんど溶けてなくなっているような作品も。

きゃらあいさんは、一見するとポップで可愛い女の子の絵、という印象なのですが、実際に作品を見ると、ぜんぜんその範疇に収まっていない、強い女の子だなー、というのを感じさせます。
ただではやられないよ、という強さ、意思の力を感じます。
今回は波板に描かれた作品が、視点を変えると見え方が違ったりしてユニークでした。
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その隣はあきつかおるさん。
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あきつさんの作品は、ライブ配信を見ていると、どうやら救済の聖女、というぐらい思い入れを込めて描いているようで、できれば売りたくない、というようにおっしゃっていました。
たしかに、作品にはものすごい強い思いが込められているなーと感じました。
アカデミックな教育を受けていないけれど、だからこそできるプリミティブな表現の強さ、そして絵上手!強く念じることでこんな強い絵になるんですねー。
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その隣は光さんのスペース。
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光さんについては、自分全然知識なかったのですが、ツイッターなどで作品を拝見して、天才か・・と驚愕していて。
小学生~中学生ぐらいまでの女の子を描いているのだけど、無垢な存在でもロリ的でもない、尊い・・としか言いようのないエモい空間。
そして、実物を見ると、筆の跡とか見えて、デジタルイラスト的に見える作品が実に絵画的だというのがわかる。
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そして、いちばん手前の壁には冨岡想さんの作品が。
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冨岡さんの作風は独特で、配信ではなんとなく・・で構想決めているとのことでしたが、可愛らしいキャラクターと、古典作品のオマージュ、そしてシュールレアリズムだったり象徴主義的だったり、今と近代を行き来しているような不思議な作品が多い。
今回の展示では、鏡を使ったりしてこれもインスタレーション的な構成になってましたね。
冨岡さんとは会場で少しお話させていただいたのですが、関西弁ではんなりしている雰囲気なのですが作品は堅牢という、ギャップがすごいなーと。あと最近は陶芸に興味があるとのことで、今後楽しみです。
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・・・という、こんな展示でした。
すっごく良かった!期待値マックスで行ったのですが、期待値超えてきました。
ほんとは、初日に感想連ツイしようかと思ったのですが、なかなか興奮して文章がまとまらなかったり、連ツイいくつ重ねればいいんだよ・・ということもあり、自重してました。
そして、昨日は2回目の鑑賞をして、だいぶ自分の中で感想が固まったので、こうして記事にした次第。



いま、現代アートの世界ではストリート系アートが席巻していて、多くのストリート系アーティストが活躍しているのですが、その中からここにきてキャラクターという要素がピックアップされてきているように思えます。嚆矢はKAWSあたりになるのかな?それまでのストリート系=アメコミ的なカトゥーン文化、からよりキッチュでポップなコミック・アニメ・ガジェットを引用するようになってきている。一方で奈良さん村上さんの活躍によって、日本的なキャラクター絵画がアートの世界で独自の地歩を固めている。
そんな状況の中で、キャラクター絵画、イラスト的絵画を超えようとしている作家さん、自分は彼らが新たな地平を開くのではないか、とすごく期待しているのです。今回の展示が振り返ったときにエポックメイキング的な意義を持っていた、という可能性はすごくある!
今回集まった10人の才能ある若者が、これからどういう活躍をしていくのか、これからも追いかけていきたいと思います!