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マイケル・ジャクソンの悲しみ


もし「スリラー」あそこまで売れていなかったら。


マイケルの心理的葛藤は、ブラックコンテンポラリーの良盤(と思ってる)「スリラー」があそこまで広い層に受けてしまったことから始まっていると思うのです。
「スリラー」発売当時の80年代前半は、時代的背景としてはまだ黒人差別が濃厚に残っていて、ヒップホップムーブメントもそうした環境から発生していったのですが、マイケルは「スリラー」の大ヒットでそうしたブラック層から完全に浮いてしまう。今ではブラックでありながら全ての層に受けることは珍しくないけれど、当時はまだそこまでいってなかった。「セル・アウト」なんていう言葉も、ごく最近まで使われていたわけだし。ジャクソン5も白人に受けていたけれど、それも「モータウンの小さい黒人少年」という括りでのこと。


彼が「スリラー」以降白人になりたがるようになったり、「BAD」というそれまでのイメージと180度違うアルバムを出したりしたのは、あまりにも大きな成功を収めたがために、そうした自分の拠って立つブラックとしてのアイデンティティから距離が開きすぎてしまったジレンマというか悲しさのためではないかと思うのです。


もし「スリラー」があそこまで売れてなければ、マイケルは完全に白人マーケットを意識した総花的な「BAD」ではなく、ブラックミュージック、R&Bとしての完成度を追い求める方向に行ってたかもしれない。当時ライバルと言われていたプリンスとはまた別のベクトルで音楽の裾野を広げていたかもしれない。その才能はあったはず。


今日は「オフ・ザ・ウォール」(ブラコンの超名盤と思ってる)を聴いて過ごしますよ。


もういっこ。J5時代ではこれ。