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「浮世絵における常識と非常識−復刻版でみる『名所江戸百景』−」

神奈川大(横浜市神奈川区)で、18日から江戸時代の浮世絵師歌川(安藤)広重の「名所江戸百景」を、斬新な手法で展示している。春夏秋冬の順に並べるのが一般的だが、今回は制作順に並べた。すると、単に名所を描いただけではなく、制作直前に江戸を襲った大地震との関連性が見えてきた。

(中略)

 たとえば、浅草の浅草寺を描いた「浅草金龍山」。幕府の出版許可印から、浅草寺の五重塔が復興して2カ月後の56年7月ごろに描かれたと推定されるという。ほかにも現在の上野広小路付近を描いた「下谷広小路」には、復興してまもない上野松坂屋の前身の呉服店「伊藤松坂屋」が描かれている

 こうした点から、原信田さんは「江戸の復興ぶりを伝えるメディアの一つだった可能性がある。一部では、復興した店の広告の意味も込めたようだ」と推測。今回の展示では、こうした新解釈にもとづいて51点を並べる。30日まで。


神奈川大学のインフォメーションページをみてみると、「ミュージアムトーク」として、今日と明日は摺り師の実演があるということで、行って来ました。
11.26(土)15:00〜16:00 (摺り 実演あり)
11.27(日)12:00〜13:00 (摺り 実演あり)



摺り師さんが今回実演してくださったのは「名所江戸百景」のうち「深川木場」(→参考画像)。
ちょっと見ると雪景色の、比較的色数の少ない版画に見えるのですが、これでも20数工程かかるとのこと。特に雪がうっすら降り積もった部分や川の藍色のグラデーションがかかった部分の「ぼかし摺り」は、そこの部分だけで数工程。
1回摺るたびに、紙の伸縮がないように湿らせた新聞紙の間に挟んで常に紙を適度に湿らせておいて、刷毛で色絵の具を版木にのせて、水を含ませた手ぬぐいとブラシでぼかしを作って、紙を乗せバレンでこすってようやく1工程。それをまた湿った紙に挟んで・・・と、気の遠くなるような作業の繰り返し。
結局自分の見た実演では1時間半ほどかかって15〜16工程までで、完成には至らなかった。
摺りの実演自体はデパートで以前見たことがあったのだけど、今回のように、材料から技法、難しさやコツまで、ひとつひとつ丁寧に解説してもらいながら目の前でじっくり見せていただくことができたのは、とても貴重な経験でした。


展示のほうは、復刻版の「名所江戸百景」のうち約50枚を、「地震からの復興」「近景と遠景」「彫りと摺り」「さまざまな角度から」という4つのセクションにわけて展示してありました。
「地震からの復興」については上の記事にある通り。また、発行された時点ではまだ復興がかなわず、想像で描かれたと思われる景色についての指摘もありました。
「近景と遠景」は、「名所江戸百景」の特徴である極端な遠近感の背後にある意図・・近景で「場所」を明示し、遠景にさりげなく「本当に描きたかったもの」を配する・・という構図を何枚かの実例で指摘していました。この近景・遠景のちょっとひねくれた使い分けはブリューゲルに共通する部分があるかも。
「彫りと摺り」では、「名所江戸百景」でふんだんに使われていた高度な技術や豪華な素材について。例えば実演でも摺り師さんが「一番難しい」とおっしゃっていたぼかしの技法や、「布目摺り」という、実際に布を当てて摺ることによって、紙に布の目のエンボス加工を施す技法など。


一番上の絵は「高田馬場」の風景なのですが、木の陰にある白い円形のものは流鏑馬の的なのです。印刷ではわからないのですが、実物をみると、その的の部分には「布目摺り」プラス表面に雲母をまぶしてあって、とても美しい。
撮影OKだったので一応撮ってきましたがわかるでしょうか・・・?
名所江戸百景


それまで「名所江戸百景」を本や写真で見ていては、奇跡的とさえ思えるような大胆な構図と鮮やかな色合いで描かれた美しい江戸の光景に心奪われていたのですが、(復刻版とはいえ)実物はこんなにも絢爛豪華なものだったとは・・・。
今まで素晴らしい素晴らしいと思って繰り返し眺めていた、本に印刷された「名所江戸百景」とのあまりの違いに、呆然。